『教育×破壊的イノベーション』クリステンセン

多くのビジネス書は、過去の事実を「新しい理論」によって解明したかのような輝かしい成果をアピールして終わります。しかし、この本は「破壊的イノベーション理論」を教育の世界に当てはめたらどうなるのか、どうすれば問題の多い教育現場を改革することができるのかを語っています。つまり、「イノジレ」の応用編です。特に、MOOCなどオンライン教育が盛り上がりつつありますが、どのようにして変革が起きるかの預言的な見方もできますし、変革者になるための考え方も示してくれます。そういう意味では、教育産業に関わっている人全般に読んで頂きたいとともに、教育以外の業界再編に取り組んでいる人にも参考になると思います。教育というと、文科省の制度がすべてを決めていて、国の制度が変わらなければ変化が起こらないような気もします。ですが、アメリカの航空業界がサウスウェスト航空の登場によって大きく変わったように、辺境からのイノベーションが起きるのではないかと予測しています。

考えてみれば、教育ほど多くのステークホルダー(生徒、教師、親、政府、納税者)がいる産業は他にありません。しかも、多くのステークホルダーが満足していないのではないでしょうか。特にアメリカの公教育システムは崩壊しています。それなのにも関わらず、遅々として変革が起こらないわけです。破壊的イノベーションの原理原則を考えたクリステンセンは、制度がニーズに合わないのは決して誰かが手を抜いているからではなく、システム内の教育提供者がそれぞれ頑張り過ぎてしまったからだという見方をします。馬車を運行していた人が怠けたから鉄道に取って代わられたのではなく、馬車がお客さんが個別に指定する地点までの移動ばかりを一所懸命に改善したため、鉄道が登場した時に遠距離の駅間移動という新たなニーズに対応できなかったのです。MOOCとともにできつつある新たなニーズを捉える者と逃す者の違いは教育関係者なら必ず知っておきたいものです。この本のメッセージは以下の5点です。

  1. 教育改革のほとんどは、生徒がうまく学べない根本原因に取り組むことなく、現行体制を前提にしながら仕組みや体制に意図したとおりの機能を行わせようとしている。
  2. また、これまでの学校改革は、現行体制を厳しく非難し、真っ向から対抗しようとするものもあるが、イノベーションと普及の理論からすれば、失敗する。
  3. 一人ひとりの子どもの学び方が違うという事実を認識すれば、現在の学校教育体制である画一的な一枚岩型のバッチシステムでは、子どもたちをそれぞれに合った方法で教育できない。組合わせながら子どもに合わせるようなモジュール方式の体制が必要になる。
  4. 現行体制を真っ向から抵抗せずに個別化を実現するためのモジュール方式はオンライン・ユーザー・ネットワークを活用したものになるであろう。
  5. 学校の管理者や指導者がこのような変化をもたらそうとするのなら、権力を用い、一部の生徒だけから始めるなどの改革手法を用いなくてはならない。こうした手法が最も利用しやすいのは、チャータード・スクールと私立学校である。

すこしビジネス視点で教育を語っているので、難解な説明がありますが、巻末には根来先生の解説がついているためとても親切ですね。
『教育×破壊的イノベーション』からの名言

人によって学び方が違うということはかなり確実だが、その違いが何であるかということは、まだかなり不確実だ。

気づいたこと
「教育」の目的は国によって違う
今日の一言
先に崩壊する地域では先に再建することができる

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